オーダーメイドの化粧箱を小ロットで作ることについて
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オーダーメイドの化粧箱を作るときに、よくご相談を承る小ロットについてまとめました。ご参考になれば幸いです。
目次
1枚からオーダーメイドの化粧箱を作れます。
当社では、展開サイズがA3に入る大きさでしたら、1枚から製造可能です。350g(紙厚約0.45ミリ)のコート白ボール紙まで対応可能で、抜型を使わずサンプルカッター機でカットした後、両面テープなどで糊付けし、箱にします。
主にサンプルやデザイン確認用となりますが、5枚で10,000円(税別)が目安となります。形状や材質、デザインによっても変わりますので、詳しくは営業までお問い合わせください。
また、POD(Print on Demand)と呼ばれる業務用プリンターで印刷するため、特色などの色再現は苦手です。4色カラー印刷になりますので、金や銀の印刷もできません。あくまで確認用やダミーサンプル程度の品質とお考え下さい。
しかし、用紙の対応力は幅広く、コート白ボール、高級白板紙など一般的な板紙をはじめ、レザックやシルバーボール紙などの特殊紙にも印刷できます。特殊紙は印刷仕上がりをイメージしにくいため、おすすめです。展開サイズがA3を超えていても、箱の主要部分のデザインだけ印刷してイメージ確認することも可能です。
↓小ロットの箱はPODで出力します。
↓シルバーボールに印刷した例です(手前がシルバーボール。奥がコートボール)。
↓PODで出力した用紙をサンプルカッターでカットします。
小ロットでオリジナルの化粧箱を製造すると高くなる理由
「オリジナルの化粧箱を小ロットで作りたい」というご要望が多いのですが、当社では最低ロット500枚からご注文を承っております。
しかし、小ロットというと、それ以下の枚数をご希望される方もいらっしゃいます。1枚からでも製造可能なのですが、かなり割高になってしまい、残念ながら1枚でも500枚でもトータルコストはあまり変わりません。
その理由は、印刷機や紙器加工機のセット時間に関係しています。印刷機等のセット時間は、1枚でも500枚でも同程度の時間がかかるのですが、そのセット時間に対するチャージ料金が発生します。つまりこれが最低料金の基準になるため、1枚だけしか製造しないとしても、500枚と同程度の総金額になってしまうのです。
また、印刷機のセットには、「予備紙」といって色調整のために受注数以上の紙が材料として必要です。受注数が1枚でも500枚でも予備紙は必要で、1色あたり100枚程度が目安となっております。このような理由から、便宜的に受注数は最低500枚とさせていただいております。
しかし、中には数量限定の記念品やキャンペーン商品のため、それ以上は不要という場合もございます。そのような場合、既製品や当社所有の抜型を使用するなどして、できるだけお安くなるようにお手伝いいたします。
オリジナルの化粧箱を小ロットで作る際の参考価格ですが、無地の箱の場合、抜型代などの初期費用を含めますと、最低でも5万円程度かかります。印刷をする場合には、さらに製版代や印刷工賃が加算されますので最低でも10万円程度はかかることになります。
化粧箱は包装資材ですので、商品単価より安いことが一般的ですが、ロットが少ないと箱の方が高くなってしまうこともあります。
キャンペーンや記念品作成などの予算が決まった企画の場合は、箱の方が高くても予算内であればOKということもあるのですが、そうでない場合は箱単価が高くなりすぎてボツになってしまうこともあります。これは、お客様の予算に対する考え方が現れる部分です。
化粧箱のギャンギング印刷について
小ロット印刷でも種類が集まると、お安くできることもあります。
例えば、同じ材質、形状、サイズで複数の箱を作る場合などです。材質と形状は同じだけど、デザインだけ変えたいという時ですね。
箱の印刷をする場合、デザインごとに版を作成するのですが、一つの版に複数のデザインを入れ込むことで、版代を安くする方法です。主に、4色カラー印刷のデザインの場合に行われます。
4色カラー印刷であれば、様々なデザインが可能ですから、それをまとめて一つの版面で印刷するのです。そうすることで、複数のデザインを一つのデザインのように印刷できます。
この方法は、ギャンギング印刷と言われており、ネット印刷で使われる手法です。ここでいうネット印刷とは、グラフィックさんやウェーブさんのようにパンフレットなどの薄物印刷をメインとする会社さんのことです。
↓以下は、ギャンギング印刷をするための製版データです。色んなデザインを一つの版面に複数面付します。
ネット印刷では、様々な顧客のパンフレットをまとめて印刷することで低コストを実現しています。A4やA3など定型サイズが多いため可能な方法です。ただし、ギャンギング印刷にも問題点があるため、トラブルになりやすいケースをご紹介します。
【デメリット】色にこだわりがある場合は向きません。
基本的には4色カラー印刷となり、濃度調整が限られます。
版面上にある複数のデザインごとに適した色調整ができないため、平らな仕上がりになります。また、同じ版面上のデザインの影響を受けるため、意図しているデザインより赤味や青味が、濃くなったり薄くなったりする場合があります。
そのため色にこだわらず、ある程度の品質でいいと割り切っている印刷物にはおすすめです。当社でも価格優先で、色にこだわらない名刺や会社案内、製品パンフレットなどで外注としてネット印刷を利用しています。
【デメリット】面付数によりロットの制限があります。
ここでは、化粧箱のギャンギング印刷についてご説明しますのでご注意ください。
当社の場合、菊全サイズの用紙が最大サイズになりますので、650×950の用紙まで印刷可能です。例えば、展開サイズが200×200の箱の場合、12面付まで可能となり、12種類のデザインを一度に印刷することができます。
また面付内容を変え、2種類のデザインを6面付ずつにするとか、面付の割合を変えて8面付けと4面付けにすることもできます。8面付と4面付けで100枚印刷したら、800枚と400枚の箱がそれぞれできる計算になります。
【注意点】複数の発注先の場合、対応できません。
化粧箱のギャンギング印刷は、基本的に、一つの発注先が同仕様でデザイン違いの箱を数種類作る場合に限られます。
「複数の会社の箱をまとめて印刷すればいいのではないか?」と思われるかもしれませんが、材質、形状、ロット、納期などの仕様が各社で異なることが多いため、タイミングを合わせて印刷することは難しいのです。
【ワンポイント】同じ版を使って色を変える
ギャンギングとは異なりますが、版は同じものを使い、色だけ変えるという方法もあります。これは、特色印刷で、色の掛け合わせを含まない場合に可能です。社名や商品名を、赤や青など色を変えて印刷して、バリエーションを増やす方法です。
【まとめ】
箱のネット印刷も各社各様ですが、ギャンギング印刷やインクジェット印刷などで対応しているようです。
印刷品質については、1点ものとしてオフセット印刷で印刷する場合が最もきれいに仕上がります。その分コストも上がりますので、品質とコストはトレードオフの関係になります。
品質を優先するとコストが高くなりますし、コストを優先すると品質がそれなりになってしまいます。
預かり在庫サービス。大ロットで作り、小ロットで配送。
化粧箱を大ロットで作り、小ロットで分納する預かり在庫サービスも承っております。
化粧箱を安く作るには、1000枚以上で大量に作ればいいということは、今までの説明でご理解いただけると思います。しかし「大ロットで作りたいのはやまやまだが、化粧箱を保管するスペースがないため大ロットで発注できない」という事情のお客様も多いようです。
当社では、そうしたお客様のために、製造した箱を保管し、ご依頼に応じて小ロットで出荷する預かり在庫サービスもございます。ただし、預かり在庫には以下のような条件が付きますのでご注意ください。
◎製造ロット:3,000枚以上から
◎預かり期間:3カ月程度
◎1回あたりの出荷ロットは要相談
製造ロットを3,000枚以上、預かり期間3カ月を目安に設定しているのは、大体1パレット1,000枚を1カ月ずつ分納するというサイクルを想定しているからです。
サイズにもよりますが、化粧箱は3,000枚以上になってくると、3パレット程度の在庫スペースが必要になります(1パレットは大体950×700ミリ程度)。板紙の厚みが、約0.5ミリ程度ですので、それが1,000枚積みあがると、高さが50センチ程度。しかし、キャラメル箱やワンタッチ式の箱のように糊付けが必要な箱は膨らみますので、ロット1,000枚でも1メートル角程度の在庫スペースは必要になります。
化粧箱はダンボール箱に入れて納品いたしますので、そのダンボール箱の体積も加算されます。配送も大体1パレットが料金の目安になっていますから、出荷基準も1パレット1,000枚程度が目安となります。ですから、1,000枚以下になりますと、1パレットとしては少なくなりますので、運賃の点でも割高となります。※1パレット1,000枚を目安としたのは、説明を分かりやすくするためです。
小さい箱(展開サイズ250×250ミリ程度)の場合は、梱包仕様も変わります。1カートン400枚程度だとしたら、カートンサイズも大体400×250×250ミリ程度。重さは約8kgとなりますので、この場合、1パレット8カートン乗せられます。化粧箱の枚数でいうと4,000枚程度となります。
預かり在庫の出荷単位は、このような考え方で計算します。サイズが小さい箱は、ロットが多くても在庫スペースが少なくて済みますので、預かり在庫にしないで一括納品させていただくことがほとんどです。
化粧箱の製造に不可欠な抜型について【価格・小ロットの対応】
化粧箱の抜型とは?
化粧箱は、印刷紙を抜型で打ち抜きし、打ち抜きされたシートを糊付けや折り加工をして完成します。
抜型の役割は、形状に沿った製品切断と折り曲げをする為の罫線を入れることです。
抜型専用のベニヤ板にパッケージの展開図どおりにレーザーで溝掘り加工し、切断や折り目(罫線)を作るための刃物(鋼材)を溝にはめ込みます。刃物は展開図の外周に切刃(紙を切断する刃)、折り目にスジ刃(凹状に紙をへこませる刃)やミシン刃(点々に切れる刃、逆折や切り取り部分に使用)など加工の目的に合わせて刃物の種類を選択します。
抜型には、刃の横に沿ってゴム、スポンジ、コルクなどを貼ります。これは型抜きする時に紙が刃に挟まらないようにするためのもので、紙を跳ね返す為に必要なもので形状や紙質などで種類を変えています。
↓実際の抜型の写真です。緑色のゴムの間に切れ刃があります。ゴムのない部分は、スジ刃です。
↓抜型を裏面からみたところ
抜き加工の製造とサンプルの誤差
印刷された紙をオートンやビクと呼ばれる打ち抜き機にセットし、抜型でプレスすると展開図どおりに型抜きされます。「展開図どおり」とは言うものの、展開図は2次元の設計によるため、実際に打ち抜かれたシートと展開図では若干誤差が出てしまいます。
誤差が最も出るのは罫線の部分ですが、この点についてもう少し詳しくご説明いたします。
試作品はサンプルカッターで制作するため、展開図に近い精度が可能です。サンプルカッターで罫線を入れた場合、その罫線幅は1ミリ以下ですが、抜型の場合、2ミリ前後になります。
抜型の場合、紙厚0.5ミリに対し溝幅2ミリなど、雄型と雌型の設定が数パターンあり、紙厚、材質、形状によって選択します。この罫線幅がサンプルカッターで作成した試作品と誤差がでる原因です。
つまり、罫線幅が太いため、折れ方が微妙に変わり、展開図と比較した時に誤差がでてしまうのです。
「この罫線幅をもっと細くして、展開図と同等レベルにできないのか?」を思われる方もいらっしゃると思います。しかし、罫線を入れるためのスジ刃が0.71ミリの厚さがあり、それ以下の細さで罫線を入れることができないため、こうした誤差を考慮しつつ、設計を微調整しています。
ここでご説明したことは、化粧箱の打ち抜きでよく使われる雄型と雌型を使用し、表抜きをした場合でのことです。ダンボール箱は、裏抜きで雌型を使わないこともあり、上記のことがすべての箱に当てはまるわけではありません。
↓スジ刃の幅をノギスで計測いたしました。大体0.75ミリ程度の幅があります(下のノギスでは、0.05ミリまでしか計測できませんでした)。
抜型の面付けについて
抜型は生産ロットや展開サイズなどを考慮して複数面付けにすることもあります。
生産ロットが多い場合は4面や8面などにすると生産性が向上しますが、展開サイズによっては機械仕様の制約を受けて1面、2面が限界ということもあります。型のサイズにより費用も変わってきますのでお客様のご予算や生産の見通しを打合せしながらご提案しております。
抜型を作成するための価格
抜型の価格については、最低でも2万円程度かかります。大きい箱や面付数の多い箱、複雑な設計の台紙になりますと、5万円を超えることも珍しくありません。刃物の劣化(刃欠け、サビ、ゆがみ、腐食)等による切れムラ、刃の付着物(サビ、黒ずみ)の色移りなどが発生する場合もあるため、定期的なメンテナンスも必要です。
また、抜型もスペースを取る関係上、保管期間は2年を目安としております。
小ロットの場合の対応
100枚以下の小ロットの場合は、抜型を作らずサンプルカッターでカットする場合もあります。
この場合は、「サンプルカッターの品質で問題ないもの」という条件がつきます。当社の実績としては、「サンプル用の箱」「ノベルティの箱」「包丁の箱に入れる台紙」などです。
サンプルカッターは、品質的にカットそのものには問題ないのですが、罫線をローラーで入れるため印刷面が傷ついたり割れたりする場合がありますので、あらかじめご承知おきください。
適正ロットで化粧箱をおすすめする理由
化粧箱の適正ロットは、1年間で使いきれるロットです。
大ロットで作ると1枚当たりの単価は安くなるのですが、在庫期間が1年を超えるケースも出てきます。
化粧箱は、長期保存していると印刷の色褪せや、用紙の変色などの劣化が起こります。当社の場合、ダンボール箱などに入れて保管しますので、1年程度でしたら問題ありませんが、時間の経過とともに様々な問題も出てきやすくなります。
当社の過去のトラブルでは、以下のような事例がありました。
・色褪せ
色褪せについては、ダンボール箱で保管し、光が当たらないようにしていても発生します。1年程度であれば問題ありませんが、徐々に色が褪せてきます。いわゆる経年劣化というもので、申し訳ありませんが、クレームの対象外とさせていただいております。
・カビや臭いの発生
3~5年以上在庫しているとカビ臭くなることがありますが、1年程度では問題ありません。合紙をしたダンボールの箱でカビ臭くなることが多く、水性ノリが原因と思われます。合紙をした直後の紙は湿り気が多く、梱包後もその湿気が残ると、こうしたトラブルが発生することがあります。
保存状況によっても変わりますが、資材を保管する場所の換気や、資材の積み替えを行うことで、ある程度防ぐことが可能です。しかし、預かり期間が長くなるほど、こうしたリスクが高くなりますので、1~2年程度で使いきれるロットで製造することをお勧めしています。
◎以下のページも、合わせてご覧ください。
投稿者:駒形 和彦