ミシン・ジッパー加工を使ったパッケージの種類と注意点
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ティッシュ箱やお菓子のパッケージに使われていることが多い『ミシン加工』や『ジッパー加工』。紙の「目なり」や抜型の刃のピッチ(間隔)など、注意する点の多い難しい特殊加工です。今回はその種類と、パッケージを制作する際の注意点について書いていきます。
目次
ミシン・ジッパー加工とは
主に、化粧箱や袋などの包装資材の開け口に見られる、点線の切り込みのことを『ミシン加工』といいます。開封に使用されるミシン加工の他に、箱の組立てを助ける役割がある「リード罫」などもミシン加工といわれることがあります。『ジッパー加工』はパッケージを開封しやすくする加工で、様々な種類があります。
ミシン加工の種類
ミシン
短いカット線を連続させて、点線のように見える線を「ミシン」と言い、パッケージの一部を切り取ったり、箱のフタを開封しやすくするために使います。
主に任意の場所を「切り取ること」を目的として使われることが多いですが、稀に、パッケージを組み立てしやすいように一部の罫線(折れ線)にミシンを使うこともあります。
フラップとフタを切り離すミシンが入ったサプリメントの箱。
フラップをミシン目に沿って切り取った様子
ダブルミシン
ミシンのすぐ隣に並行してもう1種のミシン線を作る加工です。通常のミシン加工よりもなめらかに開封できるのが特徴で、開封した後の形や紙の断面も綺麗になります。「確実にこの形で切り取ってほしい」時にオススメの加工ですが、コストは通常のミシンよりも高価になります。
ダブルミシン加工された巷の箱、湿気取り剤のパッケージです。
リード罫
上述の通り、短いカット線の連続は「ミシン」ですが、短いカット線と、短い罫線(折れ線)を交互に配列した線を「リード罫」といいます。切り取りを目的とするものではなく、紙を折りやすくするために使用します。
ワンタッチ底の化粧箱。点線で囲った部分がリード罫。
「リード罫」はワンタッチ底の化粧箱で底面に使用されることがあります。底面の糊付け部分や、側面と底面の間の罫線に使用することで、箱を折り畳んだ状態から組み上げる際に、ストレスなく一瞬で箱を立ち上げることができます。このリード罫がないと、ワンタッチ箱でも箱が組み上げにくくなります。また、納品先に商品を自動で箱に充填する設備(自動充填機)がある場合に使われることも多く、その場合は充填機の仕様を事前確認しての設計が必要です。
ワンタッチ底の化粧箱。点線で囲った部分がリード罫。自動充填に対応するため、底面を折り曲げる罫線にもリード罫を使用。
ジッパー加工の種類
ジッパー
ジッパーはお菓子の箱によく使われ、一部分を切り取るというよりも「箱を開封する」ことに特化した加工になります。箱の状態からパリパリっと開けるような場合や、メール便の箱、ピザの箱などにも使用されていることが多いです。
フリーザーバッグ化粧箱。ジッパーでフタを開けた様子
ダブルジッパー
ジッパーと平行してもう1種のジッパー線を作る加工を「ダブルジッパー」と呼びます。通常のジッパーよりも綺麗・簡単に開封することができるのが特徴。直線に開封したいパッケージや厚紙封筒などに使用されています。
ダブルジッパーで開封するA5厚紙封筒(姉妹サイト「化粧箱屋のノベルティ」にてA4サイズも取扱中)
リード罫とダブルジッパーのある抜型
こちらは後述「オレは摂取す」のワンタッチ底化粧箱を2面付してある抜型です。
底面のリード罫の部分拡大(点線で囲った箇所)
ダブルジッパーの部分拡大(点線で囲った箇所)
切れ刃は2列に取り付けてあるグレーのパーツ「吐き出しゴム」の間に埋め込まれています。抜型の詳細はコラム『トムソン方とは?化粧箱の「抜き」の種類や特徴などの解説』もご覧ください。
なぜミシン・ジッパー加工が使われるのか?
開封しやすい
開封口にミシンの無い箱や、特に店舗で販売する箱は、不正な開封を防ぐためシールでフタを留めたり、箱をまるごとシュリンクフィルムで包装します。シールやシュリンクフィルムを剥がす手間が発生しますが、ジッパーやミシンを入れることで開封しやすくなります。(開封用のミシンを入れることが出来ない・不要な形状もあります。)また、先述の「フリーザーバッグ化粧箱」や、次の「湿気取り剤のパッケージ」のように、中身の製品を取り出しやすくするためにも使用します。
湿気取り剤のパッケージ
先述のダブルミシンの項目でも紹介した「3個で1セットになっている湿気取り剤のパッケージ」です。プラスチック製のシュリンクフィルムを使用せず、紙ケースで製品をひとまとめにしています。こちらの紙ケースは2つの役割があります。
- 複数製品をまとめて販売する「梱包箱」としての役割
…裏面のダブルジッパーで開封。一つずつミシンで切り離すこともでき、開封した途端に製品がバラバラになることはありません。 - 除湿シートの保護をするフタの役割
…フタの部分は変形の為、切り取りやすいようにダブルミシンになっています。除湿シートの効き目をコントロールする為の二つの穴も、ダブルミシンで開けやすくなっています。
3個で1セットになっている湿気取り剤のパッケージ
底面のジッパーを開封後、ダブルミシンで1つずつ切り離して使えます。厚みのある板紙でも切りやすい細かなダブルミシン。
1個だけ切り離し、紙ケースを製品のフタとしてかぶせて使用
梱包箱と陳列箱を兼用できる
「商品ラベル・中身の保護・輸送用」の機能を持つ「梱包箱」に、ミシン・ジッパー加工を追加することで「陳列箱」として兼用することが可能です。後述する製造事例で紹介する箱「オレは摂取す 化粧箱」は、ジッパーで箱を斜めに開封することで製品が見やすくなり、フタを折り込めば陳列POPにもなります。
身近なところからSDGsの達成に貢献できる
パッケージや化粧箱がサステナブル(持続可能性や環境への配慮がされている)であれば、「資源の適切な利用」「環境への負担の最小化」により、SDGsの達成に貢献します。ここでは、ジッパーやミシンを利用した「巷のサステナブルなパッケージ」をご紹介します。
箱の内側に印刷した説明書で省資源-メイク落としのパッケージ
こちらのオイルメイク落としのパッケージは、箱の表3面を利用して商品説明や表示義務内容を記載していますが、それ以外の補足説明を箱の内側に印刷しています。箱の1辺(ジョイント部分)に入れたミシンを切り離すと、糊付けした箱を開いて内側の説明が読めるようになり、別の紙に取扱説明書を印刷する必要が無くなります。更に説明書を折りたたんで箱の中に入れる作業も不要となり、資源だけでなく手間も減らせる仕様です。
開封だけでなく廃棄までの利便性を追求した複数の加工-プリッツのパッケージ
こちらのプリッツのパッケージには、開封時に使うミシン・ジッパーの他にも、「箱を捨てる際のたたみやすさ」を意図したものが加工されています。廃棄のしやすさは、消費者のリサイクルへの参加と意識の向上を促進します。
パッケージ裏面(左)の底部分に、半円形のミシンとジッパーを組み合わせた加工が。食べ終わったら、半円形部分に指を押し込んで箱を簡単にたたむことができます。
「箱の開封」「箱を捨てる際のたたみやすさ」の他にも、「中身を食べるための利便性」を目的としたミシン・ジッパーを併用して加工されています。
裏面の「らくたべポケット」を組み立てセットした様子。中身を立てて食べやすくし、お皿に移し替える必要もありません。
ミシン・ジッパー加工の主な注意点
一見便利で、利点が多い『ミシン・ジッパー加工』ですが、実は気をつけないとトラブルになりやすい仕様でもあります。以下に注意点をまとめましたのでご覧ください。
素材により開封しやすさが異なる
紙の厚みや材質の違いで『ミシン加工』や『ジッパー加工』の開封のしやすさは異なります。お菓子の箱(板紙)のジッパーは開封しやすく、ネコポスなどで使用される発送箱(ダンボール)は板紙よりも少し力が必要です。材質が変更となっても設計をそれに合わせて調整しないと、例えば「板紙では開封できていたのにダンボールだと開封できない」といったトラブルが起こりかねません。当社では、材質ごとにミシンやジッパーのピッチ(間隔)や形状を変えて試作しながら、一番開封しやすい仕様を提案しています。
紙の目なりに注意
紙の「目なり」とは、原料の繊維(パルプ)が流れている方向のことです。紙箱やチラシなどを破って捨てる時に、切れにくいなと感じたことはありませんか?それは紙の「目なり」に対して垂直方向に破っているためで、反対に「目なり」に対して平行方向にちぎることで抵抗感なく破ることができます。
特に『ジッパー加工』をする際に注意しなければならないことは、ジッパーに対して「目なり」が垂直方向にならないよう設計をすることです。垂直方向にしてしまうと開封の途中で紙が切れてしまったり、開封しにくくなってしまいます。※箱の形状によってはやむを得ず「目なり」がジッパーに対して垂直になってしまう場合もあります。
デザイン制作時は「開封マーク」の向きに注意
ジッパーには開封方向があることをご存知でしょうか?ジッパーは逆方向からだと開封できません。以前、ジッパー部分に開封方向を示す矢印マークを印刷したのですが、正しい開封方向とは逆向きにしてしまい、開封できないことがありました。このように、デザインに開封方向を示すマークや文章(キリトリ線、開け口など)を入れる場合は、図面とデザインの開封方向が揃っているか注意が必要です。
こちらの画像は、開け口・三角矢印の向きとダブルジッパーの開封方向が逆になった例です。
開封し始めの段階でちぎれてしまい、うまく開けられません。
サンプルカッターと抜型の仕上がりの差
当社では抜型を使って製品を量産する前に、サイズや形状確認のためサンプル箱を作成しています。この確認の段階では、「サンプルカッター」を使用します。抜型とサンプルカッターでは刃や加工方法が異なるため、サンプルカッターで作成したジッパーは途中で切れてしまったり、ジッパーの周辺まで破れてしまう場合があります。
仕上がり比較
サンプルカッターを使ったメール便箱
サンプルカッターを使ったメール便箱を開封した様子。周辺までめくれ上がってしまうことも。
抜型を使って製造したメール便箱
抜型を使って製造したメール便箱を開封した様子
強度の確認が難しい
製品とサンプルでは製造方法が異なるため、強度の確認ができません。サンプル作成時にミシン目の強度が足りず切れやすかったため、本番でミシン目のピッチ(間隔)や形状を修正した抜型を作成したのですが、逆に開封しにくくなってしまったということもありました。
実際に抜型を作って「試し抜き」がオススメ
上記で説明したように、サンプルと製品では強度や仕上がりが異なります。
「サンプルではうまく開封できていても、抜型で製造したらうまくいかなかった。」こんなことがないように、ジッパーを付ける場合は、製品を量産する前に本番同様の抜型を作って箱を試作する「試し抜き」をオススメします。※抜型作成の費用が発生し、1~2週間程度の日数をいただきます。
試し抜きの結果、強度不足や開封しにくいなどの修正が必要となれば抜型の修正費用が発生しますが、問題がなければ試作時の抜型をそのまま量産(本製造)に使えます。量産の際に新たに抜型を作成する必要はありません。特に、自動充填式の箱の場合は、事前に試し抜きサンプルを使って製造ラインに適合しているか確認されることをオススメしております。
ミシン・ジッパー加工を使った製造事例
厚紙封筒 A4・A5サイズ
開封に便利なダブルジッパーを採用。画像はA4サイズ。書類や会社案内、カタログなどの発送に便利です。オリジナルデザインに対応。詳細は姉妹サイト「化粧箱屋のノベルティ」厚紙封筒へ
寸 法:A4サイズ:縦250×横350mm/A5サイズ:縦195×横257mm
※フタを閉じた状態。A4サイズは約27mm、A5サイズは約40mmの厚さまで入れられます。
材 質:コートボール310g/m2
加 工:フタに10ミリ巾の両面テープ加工が可能。 開封用ジッパー付き。
◎近日、『ネコポス対応サイズの厚紙封筒』を追加予定です。抜型代不要でオリジナルデザインに対応できます。詳しくはお問い合わせください。
メール便ケース
切り欠き(山型のジッパー)から開封できます。詳細は箱の形状「ネコポスやゆうパケットに対応したメール便の箱」にて紹介しています。
寸 法:縦180×横300×厚さ25mm
材 質:コート白ボール
ダイトー水産株式会社様 什器兼用 ゼリー飲料「オレは摂取す」用化粧箱
「ジッパーで開封して店舗陳列できるようにしたい」というご要望のもと、設計したサプリメント(事例詳細は)。ジッパーが平行に2列並び、めくるように切り離す「ダブルジッパー」という形で設計。箱の状態ではフタになっている面は、陳列時に2つ折りして背面POPとして使用できるようになっています。
什器兼用 携帯補給タイプ_12袋用 化粧箱
寸 法:縦70×横125×高さ120mm
材 質:白コートボール350g/㎡_
印 刷:特色2色(スミ/ピンク)+OPニス
ダイトー水産株式会社様 自動充填対応 ゼリー飲料「オレは摂取す」用化粧箱
充填工場にてスパウトパウチのサプリメントを自動で箱詰めするため、【事前に抜型を作製→試し抜き→充填工場で箱詰め可能かテスト】という順序で製造しました。こちらのジッパーは箱の下寄りに配置しており、試合やレースの前後・最中に補給するサプリメントを素早く取り出せるようになっています。
自動充填対応 スパウトタイプ_6袋用 化粧箱寸 法:縦82×横246×高さ133mm
材 質:白コートボール350g/㎡_
印 刷:通常版 特色2色(スミ/ピンク)+OPニス/コラボ版 特色1色(紺)+OPニス
上記「オレは摂取す」2種の詳細はお客様事例:自動充填対応と什器兼用ゼリー飲料用化粧箱 ダイトー水産株式会社様
サプリメント用化粧箱
中身を取り出しやすいように、フタとフラップを切り離すミシンが入っています。
材 質:特板カードB400g/㎡
丸い穴のミシン
丸い穴を開ける円形のミシンです(穴は直径40mm)。開封後はミシンに沿って穴を開け、猫じゃらしなどを穴から出し入れしたりと、子猫と遊ぶ二次利用を目的に設計しました。
材 質:コートボール310g/㎡+片面ダンボール(EF)合紙
フリーザーバッグ化粧箱
フリーザーバッグを入れるノベルティの箱として設計。抜型代不要でオリジナルデザインの箱を作ることができます。
寸 法:縦70×横235×30mm ※フリーザーバッグのサイズ:縦150×横220mm、5枚入り。
材 質:コート白ボール
ミシン・ジッパー加工はおまかせください!
開封や、箱の組立てを助ける『ミシン加工・ジッパー加工』を紹介してきました。SDGsの視点から、梱包資材の簡略化の需要は今後も続くと予想され、こうした加工のご要望も多くいただいております。当社では多数の製造実績から、注意点を踏まえた最適なご提案が可能です。『ミシン加工・ジッパー加工』を使ったパッケージは化粧箱屋ドットコムにおまかせください。
〈筆者〉 営業部 たかの
県外の大学を卒業後、地元である新潟にUターン。流通・小売業を経て2014年(株)コマガタ入社。
印刷、加工、設計など社内研修の後、営業課に配属。配属当初より「化粧箱屋ドットコム」の問合せ窓口を担当。
化粧箱などのパッケージ営業経験8年。年間見積り件数は1,500件超。
2016年JAGAT「プリンティングコーディネータ養成講座」受講。
食品や化粧品などのパッケージを多数担当。高級感のある印刷・加工、ラフ系特殊紙を扱った提案を得意とする。
「お客様の視点」を意識し、『悩みを解決できる営業マン』を目指し日々活動中。
好きな材質はエースボール。新潟市出身。1989年生まれのA型。
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