パッケージ(箱・袋)製造の第一歩!入稿データの作り方とポイントとは?
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《形式や作り方》入稿データとは?
この記事では、パッケージ印刷における入稿データの作り方をご紹介いたします。デザイン制作を行うお客様向けのダウンロード用チェックシート《入稿データ作成の注意点》も、合わせてご覧ください。
※『入稿データ』という表現は、デザイン制作をご依頼いただく場合の素材データ(イメージラフ、ロゴ、画像、テキストデータ)の場合にも使用しますが、この記事では「カンプから作成する印刷用デザインデータ+付随するデータ(画像データなど)」のセットを指しています。
デザインデータと入稿データの違い
デザインが完成したら、いよいよ印刷と製造ですが…出来上がったパッケージデザインがそのまま印刷できるという訳ではありません。この段階のデータは、あくまで画面やプリンター出力の上でのみ完成した状態の『デザインカンプ(完成イメージ)』です。
『入稿用のデザインデータ=入稿データ』とは、印刷に適した形式や仕様へ調整し、画像データなどの素材がそろっている状態のものをいいます。
デザインカンプ ≠ 入稿用のデザインデータ
見た目はよく似ていますが、同じではありません。
当サイトでは、この記事でこれから解説するポイントをクリアしたデータを『入稿データ』と呼んでいます。
入稿データの作成ツール
Adobe Illustrator
アドビ イラストレーター/通称:イラレ、Ai/化粧箱やパッケージのデザインを行うツールとして、多くの場合Adobe Illustrator(以下、Ai)が使われています。文字や写真のレイアウト、イラストや図形を描画できるため、理想とする「見た目=デザイン」を制作できます。また、それらを印刷やWebなど、最終的なメディアに合わせた形式での書き出しや保存が行えます。
Adobe Photoshop
アドビ フォトショップ/通称:フォトショ、Ps/画像編集ツールの代表と言えば、Adobe Photoshop(以下、Ps)です。画像(写真、イラストなどのラスターデータ)の加工やレタッチ、カラーモードの変換、ブラシ機能を使ったイラストの描画などが主な機能。作業の際には独自のPSD(Photoshop data)形式を用いますが、印刷やWebなどメディアに適した形式でデータの書き出しや保存が行えます。
入稿データの形式と仕様
形式
デザインやレイアウトは、Adobe Illustrator (Ai形式/CC対応)で行ってください。
※PDF保存を行う場合は、「Illustrator 編集機能を保持」に必ずチェックを入れてください。
※Adobe Photoshop(以下、Ps)を使ったデザインやレイアウトの作成は推奨しておりません。
配置画像の形式は、PSD(Photoshop data)または TIFF を推奨しています。
※上記以外の形式でも構いませんが、不可逆圧縮のかかる形式の場合は画質にご注意ください。
仕様
【塗り足し】5mmで制作
【カラーモード】CMYK/グレースケール/モノクロ(Aiデータ、画像データともにRGB不可)
【フォント】アウトライン化 必須
【配置画像】リンクファイルは、データ添付、埋め込みのいずれかを行う
入稿データの作り方
当サイトでは、以下の2点を『入稿データ』と呼んでいます。
◎入稿用デザインデータ(Aiデータ)+画像データのセット
◎画像埋め込み済みの入稿用デザインデータ(Aiデータ)
作成の手順は以下の通りです。
1.デザインデータを別名保存する
最終的にフォントをアウトライン化するため、「デザインデータ名_ol.ai」などアウトラインを意味する「ol」「OL」を追加したファイル名がよく見られます。
2.隠れたオブジェクト、ロックされたオブジェクトを解除する
入稿後の作業で事故を防ぐためにも、隠れたオブジェクト、ロックされたオブジェクトを解除してください。必要のないオブジェクトが入り込んだり、無くなったりするのを防ぎます。
3.塗り足しがついているか確認
化粧箱やパッケージの場合、図面に対して5mmの塗り足しが必須です。図面で寸法がわかるため、トンボは無くても構いません。
4.カラーモードを確認
Aiデータ、画像データともに、印刷時に色調が変化してしまうRGBは使用不可です。CMYK、グレースケール、モノクロのいずれかになっていることを確認してください。
5.フォントのアウトライン化
テキストオブジェクトがそのままの状態で入稿され、フォント不足により意図しない見た目になるのを防ぎます。また、ポイント文字オブジェクトはこの作業で削除されます。
6.画像の収集または埋め込み
入稿時に画像データの不足がないよう、イラレのパッケージ機能を使ってください。データの内容によっては、画像データは埋め込みでも構いません。(詳しくは後述)
7.内容確認ができるPDFまたはスクリーンショットを用意
内容にエラーや間違いがないかの確認用に、PDFまたはスクリーンショットをご用意ください。その際、書き出しは入稿データから行ってください。
ワンポイント!
上記の手順の他、入稿データ内に「属性/オーバープリント」にチェックの入ったオブジェクトが存在しないようにしてください。
オーバープリントの設定は、製版用データ作成時に必要に応じて使用します。色や印刷の仕上がりに影響を及ぼすため、視覚的な効果を狙ってのご使用は避けてください。
印刷時にインキを重ねたい場合は「透明/乗算」などを使用してください。
《チェックポイント》デザイン完成!入稿データのココを確認
化粧箱やパッケージの『塗り足し』は5mm
塗り足しは図面のフチまで印刷を行う(白フチのないデザイン)場合、抜き加工で裁ち落とされる部分です。製品になる時には不要ですが、抜き加工など製造時のズレで紙色が見えてしまうのを防ぐ大切な役割があります。塗り足しの不足は仕上がりに影響する場合があるため、忘れずに確認しましょう。当サイトでは、化粧箱やパッケージなど抜き型を使用する製品は、塗り足し5mmでの入稿データ作成をお願いしています。
写真やイラストの塗り足しに注意!
デザインが色ベタの場合、範囲を伸ばすだけで簡単に塗り足しを付けられます。対して、写真やイラストを使用していた場合に「塗り足し分の余裕がない」ということがよくあります。こうした事態を防ぐには、デザイン制作の段階から塗り足し分を考慮することが大切です。
AiのカラーモードはCMYK必須
デザイン制作で使用するAiには、CMYKとRGBの2つのカラーモードがあります。
デザイン制作を行う上での操作に大きな差はありませんが、印刷を行うためのAiデータはCMYKが必須となります。これは4Cカラー印刷で使用するプロセスインキのCMYKに由来しています。RGBのAiデータでも印刷は可能ですが、表現できるカラースペースが異なるため印刷の仕上がりが意図したものになりません。多くの場合、カラースペースの広いRGBからペーストされたデータは、CMYKで表現し切れずに色味がくすんでしまいます。
入稿データのカラーモードは展開中ファイルの上部(タブ)に表示されています。また、Aiドキュメントメニュー「ドキュメントのカラーモード」では、カラーモードの確認と変更を行えます。理想通りのパッケージを作るためにも、入稿前またはデザイン制作のスタート時点で必ずカラーモードをご確認ください。
RGBデータからのコピペに落とし穴!
「スミ(K100%)のつもりだったのに、掛け合わせになっていた」という経験はありませんか?
これはデザイン制作の際に、素材として使用したデータ(AiやPDF)のカラーモードがRGBだった場合によく起こります。カラーモードの違いから、コピー元(RGB)のスミ(R0,G0,B0)が、ペースト先(CMYK)では4色とも80~90%程度の掛け合わせに変換されてしまうからです。
画面上では気付きにくく、パッケージに印刷される一括表示など小さな文字で起きた場合には「クッキリと印刷されていない」という事態にもつながります。また、下図のような変化はスミ以外の色でも起こり、想定する掛け合わせとは異なる色調になることがほとんです。
画像のカラーモードもRGBは不可
Aiデータ同様、デザインに画像データを使用する場合もカラーモードに注意が必要です。「AiデータのカラーモードがCMYKでも画像がRGBだった」というケースもよくあります。こちらも仕上がりの色調に影響が出てしまうためご注意ください。入稿データに使用できるのは、CMYK、グレースケール、モノクロの3種類です。
見た目は〈白と黒〉でもカラーモードが優先
JANコードやQRコードが画像データだった場合、「モノクロ(K100%)のように見えても、カラーモードはCMYKやRGB」というケースがよく見られます。この場合も、刷り上がりがK100%と異なる場合があるため注意が必要です。JANコードやQRコードのように二階調の仕上がりが理想的な場合、カラーモードはモノクロを推奨しています。
また、白黒写真にニュアンスをプラスするために意図的にCMYKを用いる手法もありますが、意図的なものであるかどうかをデータから判断するのは難しいため、別途お知らせいただけると助かります。
フォントは必ずアウトライン化
Ai上で使用しているフォントデータは作業環境ごとに異なるため、入稿データ作成時には必ずアウトライン化をお願いしています。当サイトでもたくさんのフォントを保有していますが、お客様が使用されたフォントがあるとは限りません。せっかくのパッケージデザインを台無しにしないためにも、忘れずにフォントのアウトライン化を行ってください。
アウトライン化忘れの確認方法
入稿データの未アウトライン部分の有無は、Ai書式メニュー「フォントの検索と置換」を開き確認することができます。ドキュメントフォント(ファイルで使用のフォント)の項目が空欄であれば、展開中のファイルにフォントがない状態であると言えます。
もしも「完全にアウトライン化したはずなのにフォントが表示される」という場合は…
◎Aiオブジェクトメニュー「すべてを表示」で、隠れたオブジェクトがないか確認してみてください。
◎シンボルの登録内容にフォントが含まれている可能性があります。削除してみてください。
リンクファイルの不足に注意
デザインに画像データを使用している場合、リンクファイルの抜けにご注意ください。当サイトでは、『リンクファイルの添付』『画像の埋め込み』どちらも対応しています。画像抜けの事故を防ぐためにも、以下の点を必ずご確認ください。
◎画像データに不足はないか
◎リンクファイル無しでデータが展開できるか
『添付』と『埋め込み』どちらがいい?
それぞれの違いを以下にまとめました。どちらも、入稿データ全体の容量は同じ位になりますので、デザイン内容、作業や管理のしやすさに合わせて選んでください。
リンクファイルの添付
Aiデータに加えて配置画像のデータ添付が必要。Aiデータの容量が抑えられる(データが軽い)ため、埋め込みに比べてデータ展開が容易で作業しやすい傾向。Aiファイルメニュー「パッケージ」を使うことで添付の不足を防げます。
画像の埋め込み
配置画像のデータを添付しなくてよい。画像データの容量がAiデータの容量に上乗せされる(データが重い)ため、データ展開に時間を要し作業しにくくなる傾向。Aiデータのみで入稿できるため、手軽で便利です。
「データが重い」と感じたら…
Aiデータで調整
データ保存時に〈Illustratorオプション〉の下記チェック項目を確認してください。
PDF互換ファイルを作成:OFF
チェックを入れるとPDFプレビューが作成されます。確認用PDFやスクリーンショットの添付をお願いしているため、プレビュー作成は必須ではありません。
配置した画像を含む:OFF
チェックを入れると画像が埋め込まれます。『画像の埋め込み』と同じ状態になるため、『リンクファイルの添付』の場合は注意してください。
圧縮を使用:ON
データの内容に影響なくデータが圧縮され、データ容量が削減されます。
Psデータで調整
画像の使用サイズに対して解像度が大きい(データが重い)場合があります。使用サイズに応じた解像度に調整することで容量の削減につながります。解像度の目安は〈使用サイズに対して350ppi※程度〉ですが、原因が画像の数量である場合は無理に調整する必要はありません。
※ppi=pixel per inch/現在では、解像度の単位が dpi=dot per inch から画面表示ベースのppiになっています。
入稿データは専門スタッフがチェック!
化粧箱やパッケージでは、印刷前の製版工程で通常の商業印刷とは異なる調整・変換を行います。入稿データが製版工程に進められるか確認する際、『不足している部分』『文字の間違い』『デザイン上のミス(と思われる部分)』などについても、専門スタッフが合わせてチェックしています。
入稿データについて気になる点についてはお知らせし、再入稿をお願いしたり、当社にて修正対応したりする場合もあります。
※データチェックについては、その内容を保証するものではございません。原則として、デザインデータ内の不具合(文字の間違い・デザインミス)につきましては、お客様の責任となりますのでご了承ください。
パッケージのデザイン制作や入稿後の流れについてはこちらのページもご覧ください。
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