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トムソン型とは?化粧箱の「抜き」の種類や特徴などの解説

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化粧箱の抜型 トムソンの抜型 キャラメル箱 表面

化粧箱の抜型 トムソンの抜型 キャラメル箱 表面

印刷紙器加工業界では「トムソン型」という抜型を使用して、印刷物(シートとも言います)を打ち抜きします。打ち抜いた印刷物(シート)を糊付けしたり、折りたたんだりして箱にしていきます。トムソンの由来は、アメリカのトムソン・マシン社が発売した「トムソン型打ち抜き機」。ジョン・S・トマソンさんが設立した会社で、人の名前がそのまま使われています。

 トムソン型は、ベニヤ板にトムソン刃や押罫を差し込んだものです。工程は、ベニヤ板に図面を引き、レーザー加工した穴にトムソン刃を差し込み完成します。コートボール紙で作る化粧箱もダンボール箱もトムソン型が主流です。私共の業界で話す時、「トムソンで抜きますか?」などと言われますが、当たり前すぎてわざわざトムソンという単語をつけることは、ほとんどありません。「抜き=トムソン型で抜く」となり、「抜型代もかかる」という意味も含まれます。

 ここで「トムソンで抜かないこともあるのか?」と疑問を感じる方もいらっしゃると思います。抜きの加工も様々な種類があり、10枚程度の小ロットの場合、サンプルカッター機でカットすることもあります。ただし、抜型より仕上がりは劣りますし(罫線を折り曲げると割れてしまうなど)、スピードも遅いため、1枚当たりの価格は割高になります。

 

以下に抜きの種類と特徴をまとめましたのでご参考になれば幸いです。

 

トムソン抜き

トムソン抜きとは、印刷紙器加工業界で一般的な型抜き加工の方法です。トムソン型と呼ばれるベニヤ板に刃を埋め込んだ抜型で、シートを1枚ずつ給紙して打ち抜きます。設計の自由度が高く、直線だけでなく曲線も組み合わせて、いろんな形の箱や台紙を作ることができます。ただ、刃の厚さが1ミリ程度あり、ベニヤ板に埋め込んで固定するため、細かすぎる設計は抜型を作れない場合もありますのでご注意ください。

抜型の詳細は、下記の写真でご覧ください。

化粧箱の抜型 トムソン 部分解説

化粧箱の抜型 枠内を拡大して解説します

化粧箱の抜型の解説1 切れ刃と罫線の拡大

化粧箱の抜型の解説1 切れ刃と罫線の拡大

化粧箱の抜型の解説 切れ刃の拡大

化粧箱の抜型の解説2 切れ刃の拡大

化粧箱の抜型の解説3 つなぎと罫線の拡大

化粧箱の抜型の解説3 つなぎと罫線の拡大

 

抜型屋さんから納品されたままの抜型で打ち抜くと、製品部分と不要部分がバラけて抜け落ちたり機械に挟まってしまいます。それを防ぐために切れ刃の刃を潰す「つなぎ」を入れてから打ち抜きます。つなぎを入れた部分は、次の写真のように突起ができます。

抜いた後の状態 つなぎの拡大

打抜いた後のシートから不要な部分を取り除いた状態。つなぎが入った部分は、小さな突起ができています。

化粧箱の抜型 トムソンの抜型 裏面

化粧箱の抜型 トムソンの抜型 裏面はこのようになっています。

オートン

抜きの機械 オートン

なお、トムソン抜きは、オートン抜き、ビク抜きと呼ばれることもあります。オートンは自動給紙の打ち抜き機。少々話がそれてしまいますが、ビクとは「ビクトリア打ち抜き機」の略称で、印刷機を改造した手差しの打ち抜きの機械です。ドイツ・シュナイダー社の「ビクトリア式」という平圧式の活版印刷機を改造したもので、他のメーカーでも製造されました。同様の機械でハイデルベルグ社のプラテンという箔押しと打ち抜きを兼用できる機械もあり、これについては後述いたします。

 

 

ブッシュ抜き

ブッシュ抜きとは、鋼の金型を使用して押し抜く方法です。当社では、大ロットの日本酒の証紙などで使用します。トムソン型は「打抜き」、ブッシュ抜きは「押し抜き」といいます。打ち抜きは、印刷シートを抜型でプレスして打ち抜くこと。押し抜きは、固定された抜型に重ねた印刷シートを押し込んで抜くことをいいます。トムソン型の刃の継ぎ目などで発生してしまう「つなぎ」が無いことが特徴です。当社では、ブッシュ抜きを自動抜き、ポンス抜きを手動抜きと呼んで区別しています。

ブッシュ抜き 自動押し抜き機

ブッシュ抜き 自動押し抜き機

ブッシュ抜き 自動押し抜き機の内部

ブッシュ抜き 自動押し抜き機の内部

ブッシュ抜きの抜型 いろいろ

ブッシュ抜きの抜型 いろいろ

 

 

ポンス抜き

ポンス抜きは手動による押し抜きのことです。当社では、のぞいて位置合わせをすることから「のぞき」とも呼んでいます。金型は、ブッシュ抜きと同じものを使用しますが、手動のため多少抜型の作りが簡易になり、その分安くなります。

 

ポンス抜きの抜型

ポンス抜きの抜型

 

 

「トムソン抜き」と「ブッシュ抜き」どちらを選べばいいのか?

「トムソン抜き」と「ブッシュ抜き」を選ぶ基準については、以下のようにお考え下さい。

・「トムソン抜き」化粧箱、台紙、POP、吊り下げ札など

・「ブッシュ抜き」トランプなどのカード、日本酒の肩貼りや証紙、その他つなぎが気になるもの

「トムソン抜き」は罫線が必要になる化粧箱、台紙、POPなどで使われます。「ブッシュ抜き」は、トランプなどのカード類を製造する時によく利用されます。カード類もトムソン抜きをされることがありますが、先述のつなぎとよばれる突起が残るため、それを嫌う方もいらっしゃいます。しかし、ブッシュ抜きの金型はトムソン型より高価なため、予算の都合でトムソン抜きを選ばれる場合もあります。金型は最低でも5万円以上しますので、ある程度のロットがないと割高になってしまいます。

 

「トムソン抜き」と「ブッシュ抜き」はどちらが安いか?

「トムソン抜き」と「ブッシュ抜き」は、1枚当たりの工賃を比較すると「ブッシュ抜き」の方が安くなります。理由は「ブッシュ抜き」の方が1時間当たり多く生産できるからです。「トムソン抜き」は、打抜いた後のシートからカスをむしる工程が発生してしまいますので、その分手間と時間がかかってしまいます。

例えば、オリジナルのトランプを作ろうとする場合、以下のような違いが出ます。

・トムソン抜きだと、多面付になる。仮に13面付けにした場合、5,000ショット/時とすると、1時間で65,000枚加工できる。

・ブッシュ抜きだと、1面付けになる。2,000枚を1分程度で抜けるため、1時間で120,000枚程度加工できる。

※上記の設定は単純な加工時間の目安であり、実際には、サイズや材質により変わります。

「ブッシュ抜き」とのコストを比較する際は、抜型代をそれぞれ製品代に転嫁して比較することになります。トータルコストは抜型代が安い「トムソン抜き」の方が有利ですが、製造ロット10,000枚以上の場合は「ブッシュ抜き」を検討されてもいいかもしれません。ただし、使用する紙、形状などによって価格が変わりますのでご注意ください。

 

クリッカー抜き

クリッカーと呼ばれる油圧裁断機で打ち抜く方法です。ポンス抜きと同じく手動による押し抜きです。形状や材質により、ブッシュ抜き(自動抜き)ができないことがあり、そうした場合にクリッカーを使用します。複数枚の印刷シートをまとめて打抜けるのですが、その都度位置合わせをするため作業時間がかかります。

クリッカー 手動抜きの機械

クリッカー 手動抜きの機械

 

「ブッシュ抜き」「ポンス抜き」「クリッカー抜き」のまとめ

①「ブッシュ抜き」は自動

②「ポンス抜き」は手動

③「クリッカー抜き」は手動

「ブッシュ抜き」「ポンス抜き」は我々の業界で使用されている言葉で、語源などはよく分かりません。しかし、「ブッシュ」には軸受けという意味があるため、軸受けとなる金型でシートを押し抜くということで使われるようになったものと想像します。

ポンスの場合は少々異なっており、「ポンス」はpunch(ポンチ/英語)と同じ意味で、パンチとも読みます。パンチとは、紙に穴をあける事務用品としてなじみ深いですが、「紙に穴を空ける」という意味で同じ使われ方をするようになったのではないでしょうか。

クリッカーも正確な語源は不明ですが、以下の様子から名付けられたものと考えられます。

・「click(クリック/英語)」は擬音語で、日本語で「かちっ」「かちり」という意味があるそうです。クリッカーで商品を打ち抜くと、こういう音がします。

スーパープレス抜き

櫻井鉄工株式会社さんのスーパープレスという機械で打ち抜く方法です。トムソン型を使用します。ビク抜きは、印刷シートを1枚ずつ手で差し込むため大変危険なのですが、スーパープレスはその問題点を解消したため、最近主流になってきました。ダンボールやコートボールなど幅広い材質と、小さいサイズから大きいサイズまで打ち抜くことができ、対応力に優れています。ビク抜きと比べ生産スピードは落ちますが、安全かつ職人的な技術は不要で、抜きの加工技術を覚えるのにも適しています。

スーパープレス

スーパープレス

 

 

プラテン抜き

 「プラテン」とは、ハイデルベルグ社の活版印刷機のことですが、当社では箔押しと型抜きの機械として使用しています。サイズが小さく、A3サイズくらいの印刷シートまでの対応となりますが、小さめの箱を小ロットで製造する際は便利で、自動給紙もできます。箔押し用途では、日本酒ラベルの箔押しとして多用しています。

プラテン 箔押しと打ち抜きの兼用機として使用

プラテン 箔押しと打ち抜きの兼用機として使用

箔押し機も種類がいくつかありまして、大ロットはシリンダータイプ。小ロットは手差しタイプのアップダウン機が主流です。記事の最後に、箔押し機の機械別の特徴をまとめた一覧表を記載します。

 

抜型の保管年数について

当社では抜型の保管期間を最終製造日から約2年としています。年々新しい抜型が増えていくため、保存場所を確保できないことから、廃盤になった抜型は定期的に処分しています。抜型も使用されないと劣化が進みますが、定期的に使用していれば長持ちします。当社でも20年以上修繕しながら使用している抜型もございます。ただし、切れ味が悪くなっていくため、品質に問題がある場合は作り直しが必要です。

 

化粧箱の抜型 20年以上経過したもの 表面

化粧箱の抜型 表面 製作してから20年以上経過していますが、切れ刃やゴムなどの交換をして、現在も活躍中です。

化粧箱の抜型 20年以上経過したもの 裏面

化粧箱の抜型 20年以上経過したもの 裏面

 

 

 

機械別で分けた「抜き」のメリット、デメリット一覧表

機械名

メリット

デメリット

抜型代

用紙対応力

その他

オートン

 自動給紙で生産性が高く

 1,000枚以上の大ロットに強い

 セットに時間がかかる

  1面あたりの抜型代は安いが、

  多面付をすると高くなる

 (2万円以上)

 薄紙、板紙、

 ダンボール

 

スーパープレス

 1,000枚以下の小ロットに強く

 用紙対応力が高い

 手動給紙のため生産性は劣る

 面付数は少ないことが多く、

 安い(1万円以上)

 薄紙、板紙、

 ダンボール

 

自動打抜き機

(ブッシュ)

  ワンショットで

  大量に抜ける

  セットに時間がかかる

  高い(5万円以上)

 薄紙

 罫線は不可

クリッカー

  小ロットに強く、

  用紙対応力が高い

   1ショットごとにセットの

  微調整が必要

 高い(5万円以上)

 薄紙、和紙など

罫線は不可

※上記の価格は目安です。形状などによって変わります。

 

箔押し機の機械別の特徴一覧表

箔押し機の種類

メリット

デメリット

箔版の特徴

その他

アップダウン

セット時間が短く、小ロットに強い

1,000枚以下)

抜いた後のシートも箔押しできる

細かい図柄は苦手

加工スピードが遅い

1面付けの場合が多く、低コスト

抜きもできる

プラテン

A3サイズ以下で、中ロットに強い

1,000~3,000枚)

仕事の用途が限られる

1面付の場合が多く、低コスト

抜きもできる

シリンダー

細かい絵柄の再現性が高く、

大ロットに強い

1,000通し以上)

多面付が可能

印刷シートの状態でなければ

加工できない

(抜いた後は加工不可)

多面付の場合が多く、

面付が増えるにつれ価格も高くなる

抜きもできる

 

 

関連記事

箱の形状や、印刷などの専門用語については用語集にまとめております。

・化粧箱の外観だけでなく、製品を固定する複雑な形状の台紙も、トムソン型で抜いています。サイズや材質によっては箱と台紙の抜型を1つにまとめる場合もあります。

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・箱の形状は様々な種類がありますので、お急ぎの方や、ざっくりと把握したい方におすすめな記事もご紹介しましょう。当社における箱の形状の人気ランキングと、各形状の特徴、コスト、組み立て時間をコンパクトにまとめています。

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