日本酒カートン試作1 限りなく円柱に近い箱、折りたためる箱
設計
オリジナル形状を企画するミーティングで、日本酒カートンを「限りなく円柱に近付ける」というテーマが上がりました。
以前、お客様から「賞状入れのような筒状の箱」のお問い合わせをいただいたことがありました。業界ではそのような箱を「紙管(しかん)」と呼び、製造には専用の設備が必要となります。当社はその設備が無いため協力会社にお願いしていますが、自社の設備でも紙管、つまり円柱に近い形状の箱が作れないか?と開発に着手。試作を重ねるうちに、折りたためる箱など色々なアイデアが浮かび展開していきました。こちらを「日本酒カートン試作」シリーズの第一弾としてお届けしていきます。
目次
限りなく円柱に近い箱へ…「八角柱」に挑戦
以前、日本酒720ml(4合瓶)用カートンで、六角柱の箱の実績(六角柱を生かした昔の郵便ポストのデザイン)がありました。
この六角柱をベースとして、円柱に近づけていけばいいのでは?と、まずは角を増やして「八角柱」から試作をスタート。
ところが、八角柱は六角柱に比べると側面の強度が心もとないと感じました。十・十二・・・と角が多くなればなおさら強度不足は顕著になると予想できました。
試作1回目:三角グリッド八角柱
そこで、三角形のグリッドを側面に追加し補強できそうか試してみることにしました。アルミやスチール製の缶飲料で見かけるグリッド構造は、グリッドの無い缶と同じ強度でも、素材の厚みを減らすことができたとのこと。(なんと17%もの削減に成功したそうです。)この三角形のグリッドなら、紙素材でも強度が増し、八角柱から更に角の数を増やした場合にもパターンを追加しやすいのでは、とも考えました。その試作がこちらです。
八角柱の日本酒(720ml)カートン試作。※展開図がプリンタ用紙サイズを超えた大きさになるため、縮小して試作しています。
写真左から、日本酒用の180ml瓶(1合瓶)、180ml用(土台は四角柱)、720ml用の試作。土台の形状も色々と試しました。
試作1回目の検証結果:複雑過ぎて大量生産に不向き
側面のグリッドの折り目が作る影が綺麗に並び、写真映えする箱に仕上がりました。強度は、元の八角柱よりも出せましたが、
残念なことに罫線が複雑過ぎて組み立てに時間がかかり、紙での大量生産には不向きです。
新たな着想:折りたためる箱で紙管のデメリットを払拭できるのでは?
八角柱の組み立て中に「ひょっとしてこれは上方向から潰して、コンパクトに折りたたんで捨てられるかもしれない」と思いつき、実際に試しました。折り目が多すぎて上手くいきませんでしたが、紙管は筒状になっていて折りたたむことができないため、保管場所や輸送コストが上がってしまうデメリットがあります。側面の形状をより単純化すれば、そのデメリットを払拭した日本酒カートンが作れるかもしれない、と別のパターンの試作に取り掛かりました。
折りたためる箱にするには…まずは、ひねってみた
試作2回目:ツイスト八角柱
いくつかパターンを試作した中で、こちらは箱をひねりながらコンパクトに潰すことができました。補強効果も期待できそうです。
潰している様子です。
試作2回目の検証結果:強度は十分、ただしサイズ拡大がネック
三角グリッドより深く折りたため、強度がかなり増した印象です。
ただし、深く折りたたまれる分、箱に組んだ時の高さ・内径が縮まり、内容物を入れるためには通常の箱より展開サイズの拡大が必要とわかりました。サイズは紙や抜型などのコストに直結する点と、三角グリッドより折る回数が減ったとはいえ、やはり大量生産には不向きな点がネックです。
試作3回目:アコーディオン式
そこで、さらに三角形以外のパターンでたためる形状がないか模索しました。今度は、楽器のアコーディオンの「蛇腹形状」を側面に組み込んで試作です。
左から、箱の側面2方向に蛇腹を付けたもの。右は、更に4方向に付けたものです。
折りたたむ様子
左が組み立て後、右は図面をプリントしたもの。
たたんだ状態でフタを開けてみた様子。
試作3回目の検証結果:上手くたためたが、角がよれてしまった
どちらも上手く折りたためましたが、角がよれてしまいました。
次回は、角部分に切れ目を入れるか、または穴を開けてよれを防ぎつつ、八角柱にて試作予定です。
まとめ
試作の初期段階は、ラフを手書きして図面を起こし、手作業で折ったり切ったりしながら考えています。
これらのような複雑な細かい折りの入る形状は、実際には機械での製造が難しい面もありますが、
実際に手を動かしていろいろなパターンの罫線・折りを作ってみて得た発見は、他の案件にも繋げていけそうです。今後も模索と試作を続け、お役に立てるように引き出しを増やしていこうと思います。
こんなテーマで作って欲しい、などのリクエストもお待ちしております。