化粧箱のあれこれ。《種類や用途・印刷工程・材質・形状・価格について》
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目次
化粧箱とはどんな箱?その他の箱との違いとは?
『化粧箱』とは、主に「印刷や加工を施した外装箱」のことを指します。「品物を飾る(化粧させる)箱」と言えばわかりやすいかもしれません。
ギフトカタログなどで「化粧箱入り」という表記をよく見かけるように、贈答品や詰合せ商品を入れるために用いられてます。実際に、当社で製造する化粧箱も贈答品や詰合せ商品用のシェアが高めとなっています。
また、上記以外にもスーパーやコンビニで売られているお菓子など、いわゆる商品パッケージの箱も「化粧箱」です。
この記事で説明する「化粧箱」とは、主に「紙箱」のことですが、紙以外の材質の場合にも「化粧箱」という言葉は用いられます。「箔押しやスクリーン印刷をした木箱」「印刷加工をしたクリアケース」なども「化粧箱」と呼ばれます。
化粧箱
◎印刷加工を施した紙製の箱のこと。
◎コートボール、板紙の合紙、特殊ダンボールやカラーダンボール製など様々。
◎「木箱」や「クリアケース」など、紙以外の材質でも印刷や装飾が施されたものは「化粧箱」と呼ばれる。
白箱
◎印刷加工を施さない紙製の箱のこと。
◎主にコートボールなどの板紙製。
茶無地箱
◎印刷加工を施さないダンボール素材の茶色い箱。
◎化粧箱の保護目的などでも用いられる。
「既製品」と「オーダーメイド」の違い
化粧箱は、既製品とオーダーメイドに分けられます。
既製品を探したことのある方ならご存知かと思いますが、「欲しいと寸法が見つからない」「ちょっとイメージと違う」というように、希望どおりの化粧箱は意外と無いものです。すぐに手に入り、初期費用やロットなどを抑えられる点は優れていますが、希望をすべて満たすのは難しいのが既製品です。
それに対し、「ジャストサイズの箱が欲しい!」「納得のデザインにしたい!」など、サイズ、材質、形状、デザイン、表面加工、ロットなど、全てお客様のご希望に合わせて製造するのがオーダーメイドです。私たち化粧箱屋ドットコムは、オーダーメイド化粧箱を専門に営業しております。
以下、既製品オーダーメイドのメリットとデメリットをまとめてみました。
既製品のメリットとデメリット
●50枚程度から購入可能
●2~3日程度で入手可能
●初期費用がかからない
×他社でも同じデザインの箱を使う可能性がある
×ピッタリ合うサイズがあるとは限らない
×色や材質などの仕様の自由がきかない
×オリジナルのデザインにはできない
既製品の参考サイト
化粧箱net kesyoubako.net
横井パッケージ株式会社 www.yokoi-package.co.jp
シモジマ shimojima.jp
モノタロウ www.monotaro.com
オーダーメイドのメリットとデメリット
●希望通りのデザインにできる
●他社とデザインが被ることがない
●サイズや形状をピッタリにできる
●用途や好みに合わせて材質を選べる
×抜型代、製版代などの初期費用がかかるため、小ロットの場合は既製品よりも割高
×校了(製造開始)から2週間程度納期がかかる。
化粧箱の用途と言えば…
当社で製造している化粧箱の用途は、贈答用やセット商品用のものが多いのですが、他にもよく利用される商材は、酒類や菓子・果物などの食品、食器類や布製品などの雑貨、工具や部品などの工業製品まで、多岐に渡ります。主な用途は以下のとおりです。
《食品各種》
酒類(日本酒、ウイスキーなど)、菓子類(米菓、おまんじゅう、詰合せ商品、など)、果物、健康食品、など
《雑貨・日用品》
刃物(包丁、爪切り、など)、食器類(マグカップ、など)、布製品(衣類、タオル、など)、化粧品、家電製品、など
《工業製品》
草刈刃、工具、業務用の機械部品、など
需要の高い形状 3種
化粧箱の形状は、「キャラメル箱」「地獄底」「ワンタッチ底」「ギフト箱(C式)」「ピローケース」「N式」「スリーブ」など様々な種類があります。その中でも、特に利用されることの多い「キャラメル箱」「地獄底」「ワンタッチ底」の写真と図面をご紹介します。
キャラメル箱
『最も使われている形状』です。お菓子、パソコンソフト、化粧品、金属製品、電化製品など、用途やジャンルを問わず利用されています。
地獄底
底面にある程度の強度が出せるため、日本酒やワインなどのボトルを入れる箱でよく使われます。底面は手作業での組み立てが必要です。
ワンタッチ底
接着された底面は強度があるため、日本酒やワインなどのボトルを入れる箱でよく使われます。底面が接着されているため、広げるだけで出来上がります。
ここでご紹介したのは、特に利用頻度の高い3種類です。化粧箱には、「ギフト箱(C式)」は贈答用の食品や衣類、「ピローケース」なら小物、「N式」はラーメンのギフト箱、というように、箱に入れる商品によって人気や傾向があります。その他の形状や使用事例は、≪箱の形状≫、≪実績紹介≫をご覧ください。
化粧箱の材質と選び方
一般的な材質
化粧箱の材質は、ボール紙と呼ばれているような板紙が一般的です。ボール紙と言っても「コート白ボール」「片面コートカードB」「片面コートカードA」「高級白板紙」など、実は様々な種類があります。その中でも、裏面がネズミ色のことから「裏ネズ」とも呼ばれる「コート白ボール」は、非常によく使用されていま
す。
化粧箱の材質は、商品の価格帯やジャンルによって決まることが多いと感じます。当社でよく用いられる材質を以下にまとめました。
写真 左:白コートボール/右:片面コートカードB
コート白ボール
比較的安価で、印刷入りの化粧箱が欲しい、雑貨、食品、サービスのギフト箱、など。
印刷ができれば、白い面は表のみで問題ないという場合に適している。
片面コートカードB/高級白板紙
商品単価が高く、清潔感や高級感が求められる、化粧品、健康食品、など。
白色度が高く両面が白い点が適している。
合紙(コート白ボール+片面ダンボール)
商品単価が高く、化粧箱に強度も求められる、日本酒、缶詰や瓶詰めのギフト箱、など
「コート白ボール」に「片面ダンボール」を貼り合わせる「合紙」は、オフセット印刷にダンボールの強度が加わる点が優れている。
単体では箱にすることが難しい「ファンシーペーパー」を使い化粧箱を作成することも可能。
その他の材質は、≪箱の材質≫をご覧ください。
化粧箱の印刷で多いのは?
化粧箱は、商品イメージを印刷などで表現することが可能です。商品写真、ロゴマーク、ロゴタイプ、イメージカラーなどオフセット印刷で表現します。化粧箱の印刷で特徴的なことは、4Cカラー印刷以外に特色印刷やベタ印刷が多いことです。どんな印刷なのか、以下に解説します。
特色印刷
CMYKの4cカラー印刷では再現できない色を表現するために調色されたインキのこと。色の指定には、DICカラーガイドやPANTONEの見本帳がよく用いられます。
特色の特徴は、発色が良く、色のブレが少ないことです。4cカラーで特色をイメージした色を表現することもありますが、色ムラが出やすかったり、見本帳ほどの発色が得られないことがあるため注意が必要です。
化粧箱では、写真や文字はCMYKの4色カラーで印刷し、ロゴやベタ面などは特色で印刷、という使い分けを行うこともあります
ベタ印刷
化粧箱では、ベタ印刷が多いことも特徴です。ベタ印刷とは、用紙の全面に単色で印刷することを指します。
下記リンクの事例のように、会社のイメージカラーを特色でベタ印刷するということもよくあります。4色カラーで再現する全面印刷と違い、特色をアミ100%で印刷するため、刷り上がりがきれいです。箔押しや表面処理との組み合わせで、1色印刷でも高級感を持たせることも可能です。
濃い色のベタ印刷では、ちょっとしたゴミも目立つため2版使用したり、注意深く検品を行い、ピンホールなどを発見した場合は手直しすることもあります。
化粧箱の表面処理と特殊加工
化粧箱では、印刷面の保護や質感を加える目的で、以下のような表面処理を行います。
◎OPニス/マットニス
◎プレスコート/マットビニール
◎クリアPP/マットPP
OPニスは、食品や雑貨からギフト箱までよく利用されています。プレスコートはパソコンソフトや健康食品などで、クリアPPやマット系の表面処理は化粧品の箱が多いでしょうか。どれを選ぶかはお客様の好みですが、商品単価が高いものほど、強く質感を出せる表面処理が選ばれているように感じます。
ツヤを《出す》表面処理
OPニス、プレスコート、クリアPPは、ツヤを出す加工です。ツヤ感と保護強度は「OPニス<プレスコート<クリアPP」の順で強くなりますが、その分コストもアップします。
OPニスは化粧箱で最も多い表面処理と言えますが、無処理と比べて若干ツヤを感じる程度です。ツヤ感よりも印刷の表面を保護する目的で使用されています。はっきりとした光沢を求める場合はプレスコートやクリアPPをおすすめしています。
ツヤを《消す》表面処理
また、マット系のPPには、擦れ傷に強い「耐キズマット」や「梨地」、しっとりした手触りの「ベルベットマット」など、様々な種類があります。
化粧箱を飾る『箔押し』加工
箔押しとは、金や銀の箔を紙に熱で転写する加工です。そのため、「ホットスタンプ」とも呼ばれています。
箔をフィルムから紙へ転写するための金属版が必要なため、製造コストは上がりますが、オフセット印刷では表現できない質感や高級感を加えることが可能です。そのため、日本酒や化粧品の箱など、高級感が必要な商品でよく使われています。
箔の色は、一般的なツヤのある金や銀がダントツで人気ですが、メタリック、ホログラム、顔料、パールなど様々な種類があります。箔押しを用いることでデザインの幅も広がり、「マット感の高いPP加工にワンポイントで光沢のある箔押しをプラス」など、質感の差による表現もできます。
既製品とオーダーメイド、どちらがお得?
適正価格はロットが決め手
化粧箱の価格は、「既製品かオーダーメイドか?」「製造ロットはどれくらいか?」で変わってきます。一概にどちらがお得とは言えませんが、後述のとおり必要とする化粧箱の数が目安になってくるでしょう。
既製品は、50枚程度から購入でき、総額で1万円以下の商品も数多くあります。ただし、単価×個数で計算し続けるため、数が増えることで単価が下がることはありません。
それに対して、オーダーメイドの化粧箱は、抜型代、製版代などの初期費用を含めると、最低でも5万円程度はかかります。ロットも500個程度からのため、ハードルが高く感じます。しかし、ロットがある程度大きい場合には、1個あたりの初期費用が下がったり、用紙を無駄なく使えたりする面から、単価は小さくなっていきます。
オーダーメイド化粧箱の『経済ロット』
オーダーメイドの化粧箱では、初期費用を含めて計算した単価とバランスのよい製造数を『経済ロット』と呼びます。同一条件の化粧箱の単価が、「単価が高すぎる」と感じない価格になってくるのが、製造数(個数)2,000〜3,000個のあたりでしょうか。
この辺りから、既製品と遜色ない、場合によっては安くなることもあります。また、若干高かったとしても、サイズも仕様も希望通りの化粧箱が作れるなら、むしろお得とも考えられます。
詳しくは、以下の記事もご覧ください。
化粧箱の価格計算はややこしい?
化粧箱の価格計算は、積算で行います。刷版、用紙、印刷工賃、加工工賃、包装費、運賃などに管理料をかけたものです。
特徴的なのは用紙の計算方法で、枚数ではなく「1kg当たりいくら」で計算をするところです。特殊な単位ですが、板紙100枚の重さ(kg)のことを連量(れんりょう)と呼び、1連=100枚、価格の計算は『連量×kg単価』で行います。
連量= 板紙100枚の重さ(kg)
※通常の薄紙は1連=1,000枚
連量は、用紙の㎡当たりの重さ坪量(g/㎡)と、用紙サイズから計算できます。
連量(kg)= 坪量(g/㎡)×(面積)㎡×100枚
坪量 350g/㎡ サイズ 550×800mm の場合
坪量 0.35 × 面積(0.55×0.8)× 100 = 15.4 → 15.5kg(連量の小数第1位は二捨三入)
※連量(kg)に合わせて、坪量はg→kgに、面積はmm→mにして計算します。
上記での計算ができれば1連あたりの価格が計算できます。更に、100枚で割ると板紙1枚の単価が分かります。
紙は、同じ坪量でもサイズによって連量が変わるため、枚別単価にしてしまうと価格管理が煩雑なってしまいます。そのため、このような計算方法になっているのではないでしょうか。慣れないうちは大変ややこしく、「なぜ、1枚当たりいくらにしないのだろう?」と思ってしまいますね。
最近では用紙の価格も上昇傾向のため、詳しい価格についてはお問合せページをご利用ください。
化粧箱屋の繁忙期
当社で扱う化粧箱の製造が増えるのは、9月〜11月頃。年末年始の使用を想定したものが多くなる時期でもあります。日本酒や米菓をはじめとする菓子類は、9月頃から売れ行きがよくなる傾向のため、化粧箱のご注文や製造量もそれに伴って増加するからです。
2000年前後までは、9月あたりからお歳暮向けの化粧箱が顕著に増えていましたが、虚礼廃止の流れには逆らえず昔ほどではありません。また、以前は業種を問わず様々な箱の製造が秋に集中していましたが、近年は年間を通して平準化されてきたと感じています。
クリスマスケーキ、鏡餅、バレンタイン向けのような、季節物の化粧箱はかなり早くから製造を始めています。鏡餅の箱などは、6月頃から製造に取り掛かっているそうです。ちなみに、当社では極端に季節イベントに寄った化粧箱の製造は少ないため、あまり影響は受けません。
余談ですが、鏡餅の様に短い期間で大量に売れる商品の化粧箱は在庫しておき、時期になったら随時出荷するという流れになっています。当社でも、製造した化粧箱を在庫して、お客様の使用状況に合わせた納品を行う場合があります。
納期について
新版(新規の製造)で、約2~3週間、リピート品(受注・製造実績あり)であれば、概ね2週間程度で納品となります。ただし、印刷・加工、形状の関係で工程数が多いものや、繁忙期(9~11月)のご注文は、納期まで時間をいただく場合がありますのでご注意ください。
見積り依頼やご相談で必要な情報
◎サイズ(箱または内容物)
◎内容物(中に入れる商品など)
◎箱の実物(ある場合/写真でも可)
化粧箱のお問い合わせは「こんな箱をつくりたい」という見本があれば、是非お送りください。
箱のサンプルや実物のご送付ができない場合は、写真をメールしていただいても結構です。写真をお送りいただく際には、サイズの記載も必ずお願いします。お問合せで意外と多いのが、「サイズの記載漏れ」です。化粧箱は、まずはサイズを決めて、展開図作成、材質の選定を行い、そこへ加工費、運賃などの計算をしていくため、サイズはとても重要な情報です。
また、『サイズ、形状、印刷、表面処理、何をどうしたらいいのかわからない』という場合、まずはご相談ください。近い商品でよく使われている加工方法などを参考にご提案しています。具体的なご希望がある場合も、見本や資料をお送りいただければ、どんな印刷や加工なのかをお調べしてご提案します。
文責:駒形 和彦