《仕上がりに差がつく!》化粧箱デザインの『塗足し』と『余白』
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どんな印刷物にもつける『塗足し』は、仕上げの裁ち落としを行なっても不要な白地を見せないために必要なスペースです。チラシなど平面の印刷物では、仕上がり寸法に対して3mmつけるのが一般的ですが、化粧箱の場合は少し違っています。
化粧箱では仕上げの際に、展開図に合わせた『抜型』を使用するため、塗足しや余白のとり方にルールやコツがあります。この記事では、化粧箱の基本的な形状ごとの塗足しのつけ方や、仕上がりをアップさせるポイントをご紹介します。
目次
《化粧箱の展開図別》基本的な塗足し
塗足しの幅は、デザイン面の終端から5mm
化粧箱は展開図を元に製作される『抜型』を使用する都合上、通常の印刷物よりも多い『5mm』の塗足しを必要とします。さらに、化粧箱の塗足しは形状に対してつけるため、最低限必要な塗足しの範囲が形状によって異なります。
当社で製造する化粧箱の中でも、特に多いのがご紹介する5つの形状です。特殊な形状の化粧箱でも、ベースとなるのはご紹介する5種類の展開図が元になっていることがほとんどですので、塗足しの付け方に迷った際の参考になれば幸いです。
キャラメル箱
化粧箱では最もポピュラーな形状とも言えるのが、キャラメル箱です。フタと底の閉じ方が同一の形状です。
図左:見える範囲のみデザインする場合
基本的な塗足しの付け方です。展開図の範囲にデザインを収め、背景に色や絵柄がある場合は展開図の外側や境目(折りケイ)に対して5mmの塗足しをつけてください。フタの差し込み部分を接着するような場合も、こちらの塗り足しが該当します。
図右:フラップにもデザインする場合
通常見えない部分にもデザインを入れたい場合などに用いられます。ただし、組み立てた際の、向きや柄合わせに注意が必要です。
地獄底
化粧箱のフタ(天面)の形状はキャラメル箱と同様ですが、底面は強度をアップた組み立て式の別形状になっています。化粧箱のフタと底の形状が異なり、天地が決まっている形状です。
左:見える範囲のみデザインする場合
基本的な塗足しの付け方です。展開図の範囲にデザインを収め、背景に色や絵柄がある場合は展開図の外側や境目(折りケイ)に対して5mmの塗足しをつけてください。底面に対しても5mmの塗足しが必要です。フタの差し込み部分を接着するような場合も、こちらの塗り足しが該当します。
図右:底やフラップにもデザインする場合
通常見えない部分にもデザインを入れたい場合などに用いられます。ただし、組み立てた際の、向きや柄合わせに注意が必要です。
ワンタッチ底
化粧箱のフタ(天面)の形状はキャラメル箱と同様ですが、底面は一部が接着されているため組み立てやすいのが特徴です。化粧箱のフタと底の形状が異なり、天地が決まっている形状です。
左:見える範囲のみデザインする場合
基本的な塗足しの付け方です。展開図の範囲にデザインを収め、背景に色や絵柄がある場合は展開図の外側や境目(折りケイ)に対して5mmの塗足しをつけてください。底面に対しても5mmの塗足しが必要です。フタの差し込み部分を接着するような場合も、こちらの塗り足しが該当します。
図右:底やフラップにもデザインする場合
通常見えない部分にもデザインを入れたい場合などに用いられます。ただし、組み立てた際の、向きや柄合わせに注意が必要です。
底面のりしろについて
底面には接着される部分があるため、のりしろが必要です。ご入稿いただくデータの場合、のりしろは展開図に合わせて当社スタッフが作成しますので、ご安心ください。
N式箱
身箱とフタが一体になった組み立て式の化粧箱です。組み立ての手間はありますが、抜型で打ち抜いた状態で保管できる点や、接着がない分コストを抑えられる点で人気のある形状です。
左:見える範囲のみデザインする場合
基本的な塗足しの付け方です。展開図の範囲にデザインを収め、背景に色や絵柄がある場合は展開図の外側や境目(折りケイ)に対して5mmの塗足しをつけてください。底面に対しても5mmの塗足しが必要です。リサイクルマーク、一括表示、成分表示などを底面に印刷する場合は、塗足しよりも内側に配置してください。
図右:底やフラップにもデザインする場合
身フタ一体で組み立て式のため、印刷可能部分で隠れてしまうパーツが少ないのですが、通常見えない部分にもデザインを入れたい場合などに用いられます。身箱背面になる部分は、組み立てた際の、向きや柄合わせに注意が必要です。
底面の全面印刷について
N式箱の仕様上、底面にはデザインが入らなくても問題はありません。印刷の有無に関しては、以下を参考にしてください。
【印刷あり】色ベタ、不規則な柄など。側面とのつながりを気にしなくてもよい場合。
【印刷なし】側面のデザインが規則性のある柄(パターン)や写真などで、底面とつなげにくい場合。
ギフト箱(C式/身フタ式)
フタと身箱に分かれたタイプの化粧箱です。展開図は、フタも身箱も同じ仕組みの形状です。
左:見える範囲のみデザインする場合
基本的な塗足しの付け方です。展開図の範囲にデザインを収め、背景に色や絵柄がある場合は展開図の外側や境目(折りケイ)に対して5mmの塗足しをつけてください。側面になる部分は、組み立てた際の、向きや柄合わせに注意が必要です。
身箱の場合は、底面に対しても5mmの塗足しが必要です。リサイクルマーク、一括表示、成分表示などを底面に印刷する場合は、塗足しよりも内側に配置してください。
図右:内側の側面にもデザインする場合(身箱におすすめ)
通常見えない内側の側面にもデザインを入れたい場合などに用いられます。側面になる部分は、組み立てた際の、向きや柄合わせに注意が必要です。
身箱底面の全面印刷について
身箱の場合、底面にはデザインが入らなくても問題はありません。印刷の有無に関しては、以下を参考にしてください。
【印刷あり】色ベタ、不規則な柄など。側面とのつながりを気にしなくてもよい場合。
【印刷なし】側面のデザインが規則性のある柄(パターン)や写真などで、底面とつなげにくい場合。
【補足】カットラインまわりの塗足しNG例とOK例
カットされる部分には適切な塗り足しを!
カットライン上に背景の境目が来るようなデザインは、どちらかのフチに境目が影響してキレイに仕上がりません。また、フラップの折りケイ部分も塗足しが無いと予定外の白地が見えてしまうなどデザインに影響を及ぼしてしまいます。
塗足しを正しくつけることでよりよい仕上がりになりますでの、参考になさってください。
NG例(左)
組み立てた時に見えるデザイン部分にだけ背景色や絵柄が入った状態。製造時の誤差などで白地がでてしまう可能性があります。
OK例(左)
側面とフラップの折りケイ、フタの左右、フタ差し込みの折りケイに塗足しがついています。塗足しが干渉し合うカドの部分は斜めに接するよう処理します。
NG例(右)
フタとフラップの境目(カットライン)に塗り足しが無い。製造時の誤差で隣接した色や絵柄が影響してしまいます。また、フタの先端左右に塗足しがついていません。
OK例(右)
組み立て時に隠れるフラップ側にフタの塗足しがついています。それに伴い、フタの先端左右にも塗足しがついています。
塗足し幅は5mmを推奨
塗足し幅のご指定はお受けしておりません。変更のご要望の場合はご相談ください。
【こちらもチェック!】展開図の正しい位置とは?
こちらの記事では、展開図上の各面について解説しております。合わせてご覧ください。
《差がつくポイント》塗足しと余白
化粧箱は、設計・デザイン・製版はパソコン上でのデジタル作業ですが、印刷・加工・仕上げなどの製造はアナログ作業になります。そのため、わずかながらも誤差が生じます。また、化粧箱で使用する板紙は厚みがあるため、下図のように見た目に若干の影響を与えてしまいます。
この項目では、完成時の誤差を目立たなくするちょっとした工夫をご紹介します。
正面デザインに側面・天面を影響させないために
メインのデザインをほんの少し塗足してみてください!
上記のようなデザインの場合、『完成時の誤差で正面デザインを邪魔されたくない』と考えるデザイナーの方は多いはずです。展開図の折りケイどおりでも問題はないのですが、ほんの少し工夫しておくことで仕上がりに安心できるようになります。
製造時に発生してしまう僅かな誤差も、ほんの少し背景やデザインを塗足すことで正面デザインが邪魔されない仕上がりにすることができます。
用紙の厚さなどを考慮し、0.3〜0.5mm程度が目安です。
この程度であれば用紙の厚みが作用する(丸みがつく)ため、天面や側面にもほどんど影響はありません。
折りケイから内容までの余白について
最低3mm。余裕があれば5mmは確保してください。
『化粧箱を組み立てたら、デザイン面に余裕がなくごちゃついて見える』といった経験はありませんか?
展開図の状態では気にならなくても『組み立てたら気になる』のは、前述の用紙の厚みの影響と言えます。
デザインチェックの際、プリンター出力を組み立て確認される方も多いと思いますが、完成品の化粧箱にはプリンター用紙よりも厚みがある場合がほとんどです。用紙の厚み分、化粧箱のカドも丸みが出て折りケイからの余白が少なく見えてしまうのが原因です。
紙の厚さを考慮してデザインやレイアウトを行うと、すっきりとゆとりのある印象に仕上がります。
※上の図は原寸時、H108.5×W96mmのスペースで制作しています。ご覧になる環境によって表示されるサイズは原寸と異なります。
デザイン面が文庫本サイズ程度までなら…
上の図は同じスペース内に同じ文字量をレイアウトした例です。左から余白を、1.5mm、3mm、5mmと変えています。
1.5mmの余白で制作されたデザインは「折りケイからは確実に空いている」ため、展開図上では問題ありません。しかし、仮に製造や組み立ての誤差が0.5mm出た場合、確保した余白の3分の1もずれる結果になってしまいます。
余白のサイズは、誤差を感じにくい最低限としては3mm、余裕のある見た目には5〜10mm程度確保されるのをおすすめします。
大きな化粧箱、小さな化粧箱の場合は…
化粧箱のサイズが大きい場合は用紙も厚くなり、デザイン面のサイズに対するバランスもありますので、前述のサイズ以上に確保するのが望ましいと言えます。
逆に、用紙が比較的薄い小さな箱の場合でも、完成時の誤差を考慮すると、2mmは欲しいところです。
まとめ
化粧箱の基本的な塗足しのつけ方と、仕上がりをアップさせるポイントをご紹介しました。
今回ご紹介した内容はあくまで基本的なものです。実際にデザインを制作される際に不明な点やご要望があれば、化粧箱屋ドットコムまでご相談ください。
万が一、塗足しがうまくつけられなかった場合でも、ご入稿いただいたデータは専門スタッフがチェックし、必要に応じて修正いたします。
また、食品やサプリメントの一括表示、化粧品の成分表示など、文字情報が多かったり記載にルールがある場合、レイアウトするのが苦手というお客様もいらっしゃいます。そんな場合は、化粧箱の背面だけレイアウトをご依頼いただくことも可能です。
適切な塗足しや仕上がりをアップさせる余白の取り方、制作のご相談など何でもお問い合わせください。
◎関連項目